【連載】韓国ひとり歩き

NHKテレビ　ハングル講座

1993.04→1994.03

アリラン峠近くのホテルに泊まった。なかなか気に入った被写体に巡り合わず、落ち込んだ気分でホテルに戻った。一休みした後、ホテルの屋上から町を見下ろした。風呂屋の煙突と教会の十字架がやたら目につく風景であった。

「済州島の空は、ほんとうに浮気性です」と、タクシー運転手が言った。先ほどまで青空が見えていたのに……。後方からスコールのような雨が追っかけてくる。漢拏山の裾野あたりから激しい雨となった。

ソウル市内の遊園地・ロッテワールドに行った。平日のためか、人はまばらだった。超望遠カメラを肩に掛けた男、業務用ビデオを担ぐ男。証明用銀レフ板を持つ男、そして礼服の男が通り過ぎる。そのあとを、ウエディングドレスの女が小走りについてゆく。

釜山から北へ約30kmのところに、韓国三宝寺のひとう通度寺がある。幾度となくこの寺を訪れた。自然木をそのまま生かした梯子段が、米蔵に寄り添うように立て掛けられている。大雄殿、僧房などの屋根瓦は緩やかな弧を描き、ふっくらとした支柱は優しい。

日曜日の午後、マロニエ公園に行った。文芸劇場、美術会館、文芸振興院などが、この公園のそばにある。学生たちは簡易テーブルを路上脇に出して、演劇のチケットを売っていた。公園の樹の下では老若男女がくつろいでいる。

地下鉄「鍾路五街」駅で降りた。韓国で最も大きなトンデムシジャンがある。市場の中は一歩まちがえると迷路のようになってしまうほど、店が入り組んでいる。案内板の前でノートを広げ、市場の全体図を写し取った。