連載・韓国ひとり歩き 1991.04→1995.03(NHKテレビ アンニョンハシムニカ ハングル講座より抜粋)



骨董の街

仁寺洞(ソウル)

藤本巧

李朝時代の王宮・景福宮の北東にかって両班(ヤンバン)の街があった。そこを南に下ると、仁寺洞(インサドン)に出る。昔は骨董
の街として有名だった。


画廊




LinkIcon景福宮と仁寺洞周辺への地図

表具屋


1970年頃までは訪れる客も多く、その店頭には名品が所狭しと並べられ、李朝家具がうずたかく積まれていた。家具の引き出しを開けると、無造作に放り込まれた民画や小物類が出てきた。
仮表装したばかりの書画が、店裏の陽だまりに何点もも立て掛けられていたりもした。その前を、民族衣裳の男女が行き来する……。




裏通り

そこには、雑然と楽しいこの国の魅力があった。
それから十数年が過ぎ、久しぶりに仁寺洞の街を歩いた。








1969年の仁印洞風景


地の利が良いという理由から、このあたりは店舗ビルに改装され、
古美術街は長安洞(チャンアンドン)の高級工芸品のデパートへと移ってしまった。
だが、通りの裏側には、四隅が反り上がった李朝時代特有の瓦屋根や太極模様が続く懐かしい風景が残っており、旅人は心地よいリズムを感じた。


長安洞の骨董街