連載・韓国ひとり歩き 1991.04→1995.03(NHKテレビ アンニョンハシムニカ ハングル講座より抜粋)



歪んだ柱

全羅南道

藤本巧

全羅南道の小さなお寺を訪れた。一柱門の脇に上げられた説明文を読むと、李朝時代(1392〜1910)の建物と記されていた。


修行僧




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お寺の樹々


境内に入ると、建物のほとんどは建て替えられたものだった。大雄殿の柱の色はベンガラの厚塗りで、伽藍は色盲検査表の模様のようなけばけばしい。



修行僧


小綺麗に仕上げられて、なんだか趣がすっかり抜け落ちてしまい、味気ない。
「仏さまも喜んでおられるでしょう。ほんとうに綺麗になりました」








僧侶は感無量といった表情で、声をかけてきた。畑の向こう側に、自然の歪みをそのまま生かし建てられた便所が目に入った。どの柱も規制されておらず、これこそ李朝建築の美を残した建物であった。


お寺のトイレ


旅人は近づきカメラのシャッターを切った。
僧侶は衣を乱しながら血相を変えて飛んできた。
「ダメ、ダメですよ」僧侶には、ただ古い汚い建物にしか見えないようだ。

修行僧