お寺の樹々
境内に入ると、建物のほとんどは建て替えられたものだった。大雄殿の柱の色はベンガラの厚塗りで、伽藍は色盲検査表の模様のようなけばけばしい。
修行僧
小綺麗に仕上げられて、なんだか趣がすっかり抜け落ちてしまい、味気ない。
「仏さまも喜んでおられるでしょう。ほんとうに綺麗になりました」
僧侶は感無量といった表情で、声をかけてきた。畑の向こう側に、自然の歪みをそのまま生かし建てられた便所が目に入った。どの柱も規制されておらず、これこそ李朝建築の美を残した建物であった。
お寺のトイレ
旅人は近づきカメラのシャッターを切った。
僧侶は衣を乱しながら血相を変えて飛んできた。
「ダメ、ダメですよ」僧侶には、ただ古い汚い建物にしか見えないようだ。
修行僧